誰かの声に気付き身を潜めたことありますか

あの頃の未来に立っていますか?



そもそも「あの頃」がどの辺りを意味するのかは人それぞれなので、まだその未来が来ていないという見方もあります。

私はというと、立っていなくもないと言えます。子供の頃からなりたいと思っていた職業に就けましたし、それを時々「天職だな!」とか、はたまた「...転職かな」とか思いながらも10年ちょっと頑張ってこられているので(すみません、なんかすみません)、ある程度は「あの頃」思い描いていた未来に立っています。

でも、所詮は「あの頃」の私が思い描く「未来」です。それなりです。限度があります。

( ̄□ ̄)





Nさんは、とある居酒屋さんの店員さんでした。

ある夜Nさんが働くその店に友達と入った私は、すぐにNさんと意気投合。週いちペースでお店に通うようになりました。

すると、私と同じくNさんに会うためにお店に通う女子が数人いることがわかりました。その子たちとも飲みニケーションですぐに仲良しです。

そんなこんなで数ヶ月が経ちました。


私はだんだんNさんのことが好きになっていました。でも、他の女子たちもNさんのことが好きな様子でした。Nさんもわかってて気のある素振りをすることで、お店の売り上げに貢献させようとしている感じでした。

そんな人を本気で好きになるのは苦しいし面倒だな。
そうだ。身体の関係だけになっちゃえば本気にならずに済むぞ。

男女の色恋を斜めに見る病の私はさっそく行動を開始しました。
といっても、私から何かしたわけではありません。
実はお店に通うようになってすぐNさんからそういったお誘いを度々受けていました。なので、そのお誘いに乗れば良いだけだったんです。

Nさんと私の逢瀬は、開店前のNさんのお店でした。週に1回、Nさん1人で仕込みをする日があったので、週に1回、誰もいないお店で事に及びました。

こうなればもう、ただの遊び人同士です。愛だの恋だのへの期待なんて無くなります。そして気軽で楽しく、2人だけの秘密というウキウキ感のおまけ付きです。

そんな愚かな行為を重ねていた私とNさん。
確実に油断していました。

何度目かの逢瀬の日。愚かな行為の最中に、鍵をかけたお店の扉が突然ガチャガチャと音を立てました。

Nさんも私もびっくり。
出るものも引っ込みます。
(°_°)


扉の鍵を開けたのは、お店の店長さんでした。仕込みの事でNさんに話しがあったらしく、突然訪問した模様。

見つかったらタダじゃ済みません。
「とりあえず隠れて」と言われた私は、Nさんに頭をつかまれてお店の一番奥のテーブルの下に押し込まれました。

そのテーブルはお店の入り口や厨房からは死角になっているものの、もしこちらまで来られたら逃げ道がない場所です。

とにかく店長さんがこちらに来ないようにひたすらに祈りました。


(>人<;)


そのまま30分。
心臓は早鐘を打つようです。呼吸も苦しいですが、息は潜めていないと見つかりそうです。低いテーブルの下で同じ体勢をとり続けているので、お尻も痛いです。
私は一体何やってんだろう⁈って冷めた感情がひたひたと私の心に浸透してきます。
そんな状態で、恐らく厨房にいるNさんと店長さんの気配をうかがうしかありませんでした。


さらに20分。
店長さんがお店を出ていく気配が。
しばらくしてNさんがテーブルの下に顔を見せました。

「ごめんな。今店長出てってもらったから、今のうち店出て。なんか怪しまれてるぽいから、しばらく来ない方がいいかも。」

私はなぜか声が出せず、何度も頷いて応じました。そしてテーブルの下から這い出て一目散に退散したことは言うまでもありません。

以上、30分前の私にも思い描けなかった「未来」の私に起こった出来事でした。