私が萎えてしまったワケ

私には姉と兄がいます。
姉も兄もちょっと歳が離れています。
2人とも私にとっては何をやっても敵わない、絶対的で圧倒的な存在です。

とりわけ姉は、幼少期より裁縫をさせたらミシンより正確に手で縫うし、料理はお店だせるよレベルで抜群に美味しい。ものを見る目や感性が天才なんです。

唯一惜しかったのは、それを充分に自覚していて、常に周りからの賞賛を欲していたこと。

でも、我が家には兄という親族初の長男がいて、私という愛嬌120%(当時)の次女がいました。
そんな2人に挟まれ育った姉は、真ん中っ子として様々な親の要求に応えることを強いられ、自分の才能を思うように賞賛してもらえない環境で育ちました。

大人になった姉は、人から賞賛や愛情を注ぎまくられ続けるべく、さらに自分の感性を磨き続けました。ですが、姉の才能に釣り合うほどに愛情を注げる、姉がどれほど凄いのかを正確に賞賛できる人はそうそういません。
そうして、姉は人一倍愛情や賞賛に飢えた女性に育ちました。



(・ω・)




親から突然、「近々うちでご飯食べない?」とメールがきました。

普段そういうことはないんですが、まぁ最近帰ってないし、美味い肉でも親戚から送られてきたからそれで娘を釣ろうという算段だな、と推察した私は早速実家へ帰る都合をつけました。

当日、父が車で迎えにきました。実家までの道程は約15分。通常であればたいした会話もない車内です。

しかし、この日は違いました。

明らかに深刻な面持ちの父。運転しながら、前を見たまま、こう言いました。
「お母さんから、ちょっと話があるから。で、あんまり良い話じゃないから」

(・_・; エ、エ、ナニ?  ナニ??

急激に早くなる鼓動。
我が家に何やら暗雲の気配?

お母さん、何かあったの?病気?

兄の家族に何か?借金?
姪っ子誘拐された?

( ;´Д`)

妄想は果てしなく広がります。

父に聞いても「お母さんから話すから」の一点張り。私の暗い妄想に拍車を掛けます。

うちの家族は皆比較的健康で、命に関わるような事故にも病気にも遭わずに済んでいるので、家族のそういった事態に免疫のない私はその時点で泣きそうです。
仕事場では自分の両親と変わらない年齢の病気で動けなくなった人々とたくさん接してきてるのに、こういう時にそんな事はなんの役にも立ちません。

気分は暗くなる一方です。
いよいよ吐きそうです。

重苦しい空気のまま実家に到着です。
母に会って真実を知るのが恐い。でも、不安に押しつぶされそうだから早く母の顔が見たい。矛盾した気持ちを抱えながら家の中へ。

母がいました。見た所いつもの母です。表情は暗いですが、具合が悪い感じはしません。

私「どうしたの?」
母「...vinoちゃん...。お父さんは、何も話してないの?
私「うん。お母さんから聞きなさいって」
母「お父さんたら、ズルいんだから...。実はね...。」




母、涙目。私も泣きそう。
心臓がバクバクして苦しい。





母「お姉ちゃんがいなくなっちゃったの」






私「は?」





( ゚д゚)⁉︎







私「お母さん病気になったんじゃないの?」


母「何、やだ、お父さん何も話してないの?あんたお母さんの事心配してくれてたの?やだ〜」


安心した私の目からは涙。
それを見た母の目からも涙。


それから、本題に入りました。
正直、親の身体が無事なら他の事はなんでもいいやってなったので、何を聞かされても大丈夫な気がしていました。

ところがどっこい。


次は違う涙を流す事になろうとは...。


…>_<…



姉はその時点でバツイチでした。そして、2度目の結婚をして4年くらい経っています。旦那さんはとても優しく、海外出張が多い中でも姉へできる限りの愛情を注いでくれていました。


しかし、姉はそれじゃ足りなかった。


もっと愛情を注がれたかったし、もっと賞賛を浴びたかった。



そんな姉(当時30代後半)の前に、姉の期待に応えてくれる、旦那さん以外の人物が現れてしまったのです。


その人物は姉よりかなり歳上で(当時60代前半)、少し身体が悪いために食事療法を必要としていました。
姉は、旦那さんが出張へ行っている間その人物と会い、ご飯を作り、たくさんの愛情と賞賛を浴びていたんです。

そう、姉は誰かに必要とされたかったんだと思います。


一方で旦那さんも、伊達に姉が選んだ人ではありません。海外出張が続く多忙な仕事の中でも姉の変化をすぐさま察知し、興信所に調査を依頼。さらに姉も不穏な気配を察したのか、旦那さんの出張中に家出。

興信所によって姉の尻尾を掴んだ旦那さんは、私らの父に相談をしました。始めは父も、まさか自分の娘が不実な事をしているなんて思いませんから、「君がもう少しうちの子を気遣ってくれたら...」なんて言っていたそうですが、証拠を見て態度を変えざるを得ない状況に。
姉を実家に呼び、旦那さんも同席して話し合いが開かれました。

話し合いで、姉は始めシラを切りました。そんな姉へ容赦のない興信所からの証拠が。
それから姉の発言権はなくなり、協議の結果姉は「実家でしばらく反省の刑」という実刑が下りました。

私はその時点では一切話を聞いていなかったんですが、もしも私がその場にいたら、携帯を取り上げていたと思います。そして、私がそこにいなくてもそうされるべきでした。

窮地に立たされた姉が頼れるのは、不実の共犯者である例の人物です。
姉から連絡を受けたそいつは、夜に旦那さんが帰り、深夜に両親が寝静まった所を見計らって姉を迎えに来たんです!

姉は、今度は実家を家出しました。

そして、行方不明になりました。

職場もとっくに辞めていました。






幼い頃から、姉はかっこよくて何でもできて私に色んな事を教えてくれるいかした人でした。
そんな姉に対して、初めて「情けない」という気持ちで涙を流しました。

元々我が家はドライな家庭でしたので、頻繁に会ったり連絡したりはしていなかったのもあってか、今でも信じられません。

どこかで漠然と、帰ってくる場所と言ったら実家であり、両親のもとであると私は思っていました。姉も兄もそう思っていると勝手に思っていました。
適度な距離は必要だけど、のびるチーズのように離れてもつながっている様な気がしていました。

でも違いました。
この一件から私は男女の親密な関係が恐ろしく、おぞましくなってしまいました。
付き合っている人はいますが、触れられるのに抵抗を感じるようになってしまいました。
今では、彼に触れられるのが嫌なのか、男性全般嫌なのかわからなくなってます。



家族のつながりって、何なんですかね?
どう思いますか?

そういえば、姉はチーズが嫌いでした。